All Summer Long

Posted By on 2011年9月8日

小学校5年の冬休み

まだ好きな女の子と2人っきりで

映画を見に行く勇気はなかった

そりゃそうだ ちょっと前まで『東宝チャンピオンまつり』で

「ゴジラ」と「パンダコパンダ」に盛り上がっていたわけですから

そこでグループ交際のような形に持ち込み

何とか意中の女の子を巻き込んで映画に連れ出す作戦にでた

お正月映画の目玉は『エアポート75

当時のパニック映画ブーム

タワーリング・インフェルノ、大地震、カサンドラ・クロス、パニック・イン・スタジアムなどは

どの作品も話が単純明快で

字幕に追いつかない小学生でも充分に楽しめるものばかりだった

小田原【オリオン座】の最前列を陣取り、男子4人女子3人が横一列に並んで映画を観た

チャールトン・ヘストンとジョージ・ケネディの脂汗たっぷりのでかい顔が画面から迫って来る

息をのむ乗客の恐怖と地上の救援活動を描くスカイ・アドベンチャー

8時だョ!全員集合』世代の当時の小学生には、手に汗びっしょりの充分すぎる大迫力だった

 当時の田舎の映画館ではロードショー公開といっても

申し訳なさそうにまるでEPレコードのB面のように抱き合わせでもう1本映画を上映する

いわゆる“豪華!?2本立て”なのである(時には3本立てもあった)

その時にどうでもいいや程度の当て馬的に上映されたのが

なんと『アメリカン・グラフィティ

監督、脚本:ジョージ・ルーカス  プロデューサー:フランシス・フォード・コッポラ

ハラハラドキドキ映画でたっぷり満足したクラスの仲間は

カップリングされているワケの解んなさそうな青春映画なんて

もうどうでも良かったのである

休憩時間に帰ろうかぁ どうする??揉めに揉めた

“まあせっかくだからとりあえず観よう”という事になった のだが・・・・

オーディーズやクラシックなアメ車、ダンスパーティと1962年のアメリカの田舎町

僕らの頭の中にはとても受け入れる要素がまだ何も準備されていなかった

それはそうでしょう

遠足となれば「明星」や「平凡」の歌本見ながらみんなで歌謡曲を熱唱していた時代

家じゃ私がアキラ、妹がタエコ役で、子供部屋の2段ベッドをステージ代わりにして

毎日のようにフィンガー5の「恋の大予言」や「バンプ天国」を歌い狂っていたくらいですから

つまんない 帰ろうかぁ オレ先に出てる アタシも眠くなったぁ・・・

 結局車の窓越しにお尻を見せて挑発するシーンだけ大笑いして

誰となく途中で席を立ち、ゾロゾロと退散

っというのもその後、すぐ近くの“御幸の浜”で遊んで帰る約束をしていたので

男子も女子も早く海へ行きたくて仕方なかったのだろう

冬の砂浜で三角ベースや波打ち際でふざけ合って、靴がビショビショになった

学校意外で好きな女の子と会話もできて うれしくて うれしくて

帰りに「ニチイ」のデパ地下にあった「スガキヤ」で

みんなでニコニコしながらラーメンを食べて帰った事を今でも良く覚えている

私の初の「アメ・グラ」観賞は幻と化したのだ

それから2年後・・・

中学生になると私の部屋は壁も天井も洋楽アーチストのポスターだらけだった

Bay City Rollers」 「KISS」 「QUEEN」 「ANGEL」 「Aerosmith」などなど

私が「MUSIC LIFE」と「ロードショー」

友達が「ROCK SHOW」と「スクリーン」

毎月欠かさずお互いが買って、貸し借りしながら

お気に入りの女優やアーチストの写真を切り抜いてセルロイドの下敷きに挟むのを流行らせた

授業中はその下敷きを眺めて夢ばかり見ていたから

頭の中ではいつも♪「デトロイト・ロック・シティ」のイントロが鳴り響いていた

当然、ROCKを聴きだしてのめりこみ、知れば知るほどR&Rのルーツを探りたくなる

リアルタイムで感じる事が出来なかった名曲やオールディーズのレコードも沢山集めた

学校から帰ると「ぎんざNOW」にチャンネルを合わせ

塾に遅れるぞ~!の声で家を飛び出し

たまには塾をサボって【オリオン座】や【中央】、【国際】や【ネムレ】といった映画館に通い詰める

親と塾の教師に挟まれてのステレオ放送での説教はもう馬の耳に念仏

そんなWild Lowteenな嵐の生活の中

なんとか高校に入学すると1本の映画が公開された

アメリカン・グラフィティ2』(More American Graffiti) 製作総指揮:ジョージ・ルーカス

そう、小学5年生の時にあまりの退屈さから途中で映画館を抜け出してしまった

あの映画の続編

公開前から非常に評判の悪い映画であったが

なんとなく小学生の時の事を思い出しながら映画館へと足を運んだ

やはり続編を観ると1作目をちゃんと観たくなるのは当然だ

もうダックテイルもオールディーズもガールハントもウルフマン・ジャックも

何でもかんでも受け入れられる最低限の知識は持ち合わせていた

「シティロード」や「ぴあ」で公開している名画座を調べ

【早稲田松竹】まですっ飛んでいって「 アメリカン・グラフィティ」を観た

カリフォルニアの田舎町の高校生が、最後の夏休みの最後の夜を過ごす

この夕刻から翌朝までの、たったワンナイトのたわいもない出来事を描いた映画は

刺激のない、つまらない、シラケた高校生活をおくっていた私の心に羨ましさと衝撃を与えた

Tシャツの腕にCAMELのタバコを挟んで、ポール・ル・マットのマネをよくしたっけ

それからも何度も何度もこの映画を観た

彼女が出来ると家に呼んで部屋を暗くして無理矢理いっしょに観せた

VHSは擦り切れ、レーザーディスクは傷だらけだった

今でも夏の終わる頃には毎年、この映画の事を必ず思い出す

カーステから♪All Summer Longが聴こえてくると

夏の楽しかった出来事がサーッと順に蘇りだす

まるであの真っ青なエンドロールが瞼の裏をゆっくりと下から上へと流れだし

静かに夏が終わってゆく

あのクラスメイトたちは

もう何回「 アメリカン・グラフィティ」を観たのだろうか?

About The Author

The Damnedやツネマツマサトシ、The Stoogesなどのカヴァー曲をリハーサルした後、初めてのライブをコイケミュージックホールで行なう。あまりにもメチャクチャで荒々しい演奏のせいで、わずか15分ほどで電源を切られTHE HOODLUMのデビューライブは終わった。そんな原点が今の活力!歯科医師としての情熱に繋がっている。

Comments

2 Responses to “All Summer Long”

  1. さかなざんまい より:

    高校の頃、家にビデオが出現してからというもの、私も何度と無く見ました。あのパラダイス・ロードでの相手役がハリソン・フォードだって知ったのは、だいぶ後の事ですが・・・

  2. Dr. Feelgood より:

    そうでしたね田舎のアンちゃんって感じでしたからねハリソン・フォード
    12月に「TOHOシネマズ 海老名」で1週間だけ再上映されるので
    大スクリーンでもう一度観たいと思っています

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